世界遺産を研究するとはどういうことか。
私は、その究極的目標は「国際平和」に帰結すると考えている。
それはなぜかというと、世界遺産条約自体が「人類の宝」を人類全体で守っていくという理念があるからである。
その理念は国際平和につながっている。
世界遺産の研究には、無数のアプローチ方法がある。
今思いつくものでは、現在の世界遺産の現状を考察するといった研究や、修復方法の探求、世界遺産に関する教育(これも認知に関する研究や、途上国における修復現場の教育など、教育ひとつとっても、様々な研究アプローチができると考えている)など、研究課題は無限大だ。
しかし、その研究テーマに関しても、その最終目標は「国際平和」にある。
そこが他学問分野と一線を画している。
例えば、先ほど例にあげた修復に関する研究テーマを取り上げてみる。
新たに解明した研究結果は、世界遺産の文化財修復の現場に活用されたりする。
教育に関しても、研究で浮き彫りになった実態を踏まえ、子ども達に世界遺産をどう伝えていくのか、明確なヒントを与えてくれるに違いない。
以上を例に挙げてみたが、これらはどれも私たちが守り伝えていかなければならない世界遺産に活用され、それは国際平和への一歩に貢献する。
では、他の学問は国際平和に結びつかないのかという疑問もある。
確かに、他の学問分野は密接に世界遺産とつながっているものもあり、一概にそれらは国際平和に結びつかないとはいえない。
しかし、世界遺産を研究するということは、その研究結果を世界遺産に還元するということで、目的が異なっている。
私は、ここに世界遺産を研究するということの重要性を見出している。
世界遺産が世界中の国々で話題になっている昨今、世界遺産学が広く流布することで、ブランド側面より本来の理念を知ってもらうことこそが大切だと考えている。