急速に進んだIT技術の進化によって、世界遺産制度もその影響を受けることは避けられないだろう。
ここで問題の焦点となるのは、それが「負」の影響か否かである。
私の答えはノーである。むしろ、SNSを駆使し、文化遺産や自然遺産保護にプラスの影響を与えることができると確信している。
なぜ私がそう言えるかというと、実際にSNSを活用した遺産保護に前例があるからである。
それが、2015年にユネスコが行った「#Unite4 heritage」運動である。
2015年にISがベル神殿などを破壊したことがユネスコ内でも大問題になったことは記憶に新しい。
実際、我々が守っていかなければならない世界遺産が破壊される事態にユネスコは無力であった。それは仕方のないといったら、他人事のようになってしまうが、そのように感じる。
しかし、ユネスコはこのISの愚かな行為を非難するとともに、フェイスブックを使った「#Unite4 heritage」運動を開始した。
これは、SNSを使った遺産保護を世界中の人々に促した一大キャンペーンであり、情報化社会が遺産保護に有効的に働いた良い例である。
もうひとつ、SNSと遺産の間にある良い活用方法がある。それはSNSを使った「教育」活動である。
世界遺産条約にも教育の重要性が謳われているが、これはSNSを駆使することでより効率よく発信できる。
例えば、ツイッターでもイコモスやIUCNのアカウントが存在するが、ここで彼らが実際に行っている遺産の保護活動の事例などを紹介することで、世界中の人々に広報することができる。
しかし、問題もある。世界中でも彼等のアカウントは総じてひとつである場合が多く、大抵言語は英語である。
世界中の人に、その活動内容を流布するには各国の言語に対応したアカウントを作成するか、自動翻訳の技術が開発されるのを待つしかない。
以上が私の自論である。結局はSNSを使う当人によって、良いようにも悪いようにも変わるわけだが、世界遺産保護のための模範的な活用が求められるだろう。