Yu's Tea Room

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To enlarge education of world heritage for peace.

SNSなどによる情報化社会が、世界遺産活用にもたらす影響は?(コラム②)

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急速に進んだIT技術の進化によって、世界遺産制度もその影響を受けることは避けられないだろう。

 

ここで問題の焦点となるのは、それが「負」の影響か否かである。

 

私の答えはノーである。むしろ、SNSを駆使し、文化遺産や自然遺産保護にプラスの影響を与えることができると確信している。

 

なぜ私がそう言えるかというと、実際にSNSを活用した遺産保護に前例があるからである。

 

それが、2015年にユネスコが行った「#Unite4 heritage」運動である。

 

rissho-blog.hatenablog.com

 

 2015年にISがベル神殿などを破壊したことがユネスコ内でも大問題になったことは記憶に新しい。

 

実際、我々が守っていかなければならない世界遺産が破壊される事態にユネスコは無力であった。それは仕方のないといったら、他人事のようになってしまうが、そのように感じる。

 

しかし、ユネスコはこのISの愚かな行為を非難するとともに、フェイスブックを使った「#Unite4 heritage」運動を開始した。

 

これは、SNSを使った遺産保護を世界中の人々に促した一大キャンペーンであり、情報化社会が遺産保護に有効的に働いた良い例である。

 

もうひとつ、SNSと遺産の間にある良い活用方法がある。それはSNSを使った「教育」活動である。

 

世界遺産条約にも教育の重要性が謳われているが、これはSNSを駆使することでより効率よく発信できる。

 

例えば、ツイッターでもイコモスやIUCNのアカウントが存在するが、ここで彼らが実際に行っている遺産の保護活動の事例などを紹介することで、世界中の人々に広報することができる。

 

しかし、問題もある。世界中でも彼等のアカウントは総じてひとつである場合が多く、大抵言語は英語である。

 

世界中の人に、その活動内容を流布するには各国の言語に対応したアカウントを作成するか、自動翻訳の技術が開発されるのを待つしかない。

 

以上が私の自論である。結局はSNSを使う当人によって、良いようにも悪いようにも変わるわけだが、世界遺産保護のための模範的な活用が求められるだろう。

 

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ネットで勝つ情報リテラシー ──あの人はなぜ騙されないのか (ちくま新書)

【レビュー】世界文化遺産の思想(西村幸夫・本中眞編)②

前回

rissho-blog.hatenablog.com

 世界遺産委員会の弱点

・顕著な普遍的価値を論ずるのに、その評価は国の役人たちが評価する、つまり政治的恣意が絡んでしまう点で普遍的な組織体制ではない。

 

・同様に、その審査方法は推薦国が作成した書類に依拠する点からも見て取れる。

 

イコモスの貢献
  1. ギャップ・レポート(2004年)
  2. セマティック・スタディ(比較研究を行う)

 

世界遺産の登録プロセス

・日本の暫定リストの歴史を見ると、最初は日本の文化の多様な側面を代表する資産が選択されてきたことが分かる。(社寺・城郭・歴史的集落)

 

・その後は、産業遺産や聖なる山、考古遺跡といった今まで十分に評価されていなかった新しいカテゴリーが登録されている傾向にある。

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※2つ目の事柄に関しては、ギャップ・リポートにも書かれてあった新興遺産分野にも合致します。(イコモスはこれらの世界遺産が増大していくと予測していました)

それにしても、最初期から暫定リストに記載されてあった「彦根城」と「鎌倉」は何だかやりきれないですね...

 

真実性と完全性
  • 真実性(真正性)・・・簡単にいうと「(遺産が)いかに本物であるか」
  • 完全性・・・(遺産が)無償であるかどうかのものさし

真実性については、あらゆる学問分野から担保されているかが検証される。

 

緩衝地帯(バッファー・ゾーン)

世界遺産は周囲の環境と何らかの関係を持ってきたため、当該資産を適切かつ効果的に保護するために、バッファー・ゾーンの設定が原則となっている。

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そもそも、緩衝地帯って何?と疑問を持った方も多いと思います。(私もその一人です)

気になったので調べましたが、どうやら「中立地帯」が一般的な訳のようです。主に戦争・紛争の背景で使われる用語ですので、世界遺産においては全く別物の意味合いと考えてもらっていいでしょう。

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バッファー・ゾーンの課題

・自然遺産と文化遺産のバッファー・ゾーン

→自然遺産は、文化遺産に比べて規模が大きい場合が多く、それに準じてバッファー・ゾーンも大きくなる。

 

世界遺産委員会では、近年、バッファー・ゾーンをよりコンパクトにする考え方を主流としている。また、文化遺産の背景(ストーリー)を成す区域をバッファー・ゾーンにするか、それとも構成資産に指定するかで決められrない状況にある。

 

日本のバッファー・ゾーン

・最初期では、既存の法律を活用し、それでも不十分な場合は、地方公共団体条例を新たなに追加し、都市計画における高さ規制や外観帰省を行ってきた。

 

・古都奈良のときは、遺産がシリアル・ノミネーションだったため、個々の構成資産にバッファー・ゾーンを設けて、更に全体を包括する歴史的環境保全区域を設ける「二段階」の手法をとった。

 

今回はここまでです!次回はモニタリングからです!

ここまで読んで思った感想は、「彦根城」と「鎌倉」...頑張って世界遺産目指そう!という思いだけです涙

流石に二十年数年近くもの間、スルーされ続けてきたのは可哀そうです...

 

お読みいただきありがとうございました!

 

世界文化遺産の思想

 

 

 

【レビュー】世界文化遺産の思想(西村幸夫・本中眞編)

世界文化遺産の思想

文化遺産保護の歴史

・戦争による経験から20世紀初頭に「文化財保護」の考えが生まれる。

"人と同様に、文化財も守られるべきである"

 

・しかし、第二次世界大戦やスペイン内戦で、国際条約が存在しながらも、多くの文化財が失われた。この経験から、ユネスコ終戦後、ハーグ条約を発展させ、多くの文化遺産の保護のための条約と勧告を行う。文化財赤十字憲章と呼ばれる「ブルー・シールド」が生まれたのもこの頃である。その後、世界遺産条約が誕生。

 

歴史を振り返ると、戦時の文化遺産赤十字が平時の仕組みとして広がった経緯がある。今では、不動産だけでなく、民俗遺産・無形文化遺産・水中文化遺産など、多様化してきている。

 

文化遺産の国際ルールを確立しようとする運動は古来、ヨーロッパが盛んに行ってきた。フィレンツェ条約などの法規を作り、どれも一般化している。

 

世界遺産誕生

世界遺産の考え方そのものは、1954年のハーグ条約からその原型を見て取れる。

 

世界遺産は政治的なものでなく、全世界の人々がその責務を負うというニュアンスが含まれている。(×international ○world)

 

・元々、世界遺産が生まれる前から、その保護制度作りはユネスコでも行われていた。その本格的活動がヌビア遺跡保存キャンペーンといえる。

→アスワン・ハイ・ダム建設によって、アブシンベル神殿が沈んでしまうため、募金を募り、移築工事が行われた。

 

その後も多くの救済キャンペーンが行われたが、救済方針の転換と(多くの拠出金を出す)先進国の疲弊から、この活動は幕を閉じる。しかし、この流れこそが世界遺産条約が生まれるきっかけになったことは確かである。

 

世界遺産条約は、文化遺産と自然遺産をひとつの条約で保護することこそが最大の特異性である。まず、普通は文化と自然の遺産をひとつの保護することは不可能であり、現に日本も文化遺産文化財保護法、自然遺産は鳥獣保護法・自然環境保全法などで守られている。

 

このように、世界遺産条約は大変ユニークな国際法であるとともに、新たな視点を導いてくれる。例えば、世界遺産登録のために必要な緩衝地帯(バッファー・ゾーン)の設定。これは、日本の文化財保護法にはないシステムである。

 

評価基準

・「顕著な普遍的価値」を示すための評価基準は、文化的景観への関心の高まりや、自然と人との関わりも留意すべきだとの見方から、若干の変更をされた。(2005年)

 

負の遺産は評価基準(ⅵ)のみで登録されるケースが多い。原爆ドーム登録の際は、中米から慎重な意見が出ており、採決も棄権した。ユネスコも評価基準(ⅵ)のみで登録することを辞めにしたいと当時思っていたようで、原爆ドーム世界遺産に登録された翌年には、評価基準(ⅵ)のみで登録することを禁止している。

 

→しかし、西欧を中心に確立した評価基準では、西欧の物件には適切に評価できていたが、アジアを中心とする異文化の物件に対応できなくなり、(世界遺産の)地理的偏重が起きてしまう。

 

そのため、評価基準(ⅵ)の積極的な使用が次第に求められるようになり、再び改訂され、評価基準(ⅵ)のみでの登録が可能になった。(しかし、別の評価基準と合わせて登録されることが望ましい)

 

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次回に続きます。

災害と遺産保護の関係(コラム①)

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世界では、地震、台風、洪水、地滑りなどの自然災害が頻発しています。

今回は、災害と遺産保護の関係について持論を述べたいと思います。

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災害と遺産は避けては通れない関係だ。人的災害ならともかく、自然災害であるのならば、遺産への被害は不可避である。

 

ここで、重要になってくるとは、その災害が起きることを想定して未然に防ぐ遺産保護と二次被害を防ぐ遺産保護のふたつに分けられる。本論では、このふたつを中心に災害と遺産保護の関係性を述べる。

 

まず、災害を想定した遺産保護についてだが、これは災害が起きた後にスムーズに修復に移るためのプロセスを事前に構築しておくことが重要だと考えている。

 

特に発展途上国や貧困国に関していえば、上記の文化財修復プロセスが構築しておくことが急務である。

 

具体的には、日本の文化財保護法のように、文化財を保護するための優れた法体制を整えておくことが有効だろう。

 

また、文化財修復プロセス以外にも遺産展示の仕方にも工夫は必要。災害規模によっては、どうしようもない場合もあるが、やはりある程度の耐震補強などはしておくべきだろう。

 

次に、二次被害を防ぐ遺産保護について述べる。

 

これに関しては、急務の事態であるので先に述べた遺産修復プロセスを発動し、文化財を守るとともに、国際的な支援を求めることが重要だろう。

 

近年では、遺産の危機遺産リスト入りを忌避する傾向があるが、これは断じてとってはいけない姿勢である。

 

早急に国際的な支援を求める事によって、守れる文化財が増えることは確かである。

 

世界遺産条約に締約している国であるならば、締約国であるメリットを活かして、危機遺産リストに登録してもらい、世界遺産基金を遺産保護のために使ってもらうことも有効だ。(しかし、世界遺産基金は昨今不足しているという課題もあり、本当に使えるのかは悩ましいところである)

 

以上、ふたつの観点から災害と遺産保護の関係を述べた。最後に、上記の点に加えて「教育」も重要だと付け加えておく。結局、文化財を修復するのは人為的なものだから、現地の人の修復知識や能力が鍵になってくるからである。

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と、まぁ長たらしく書いてきましたが如何でしょうか。

もしよければ、私の自論についてコメントで評価して頂けると嬉しいです。

 

ここまで読んでいただき、有難うございました!

日本の文化財―守り、伝えていくための理念と実践

文化財学の基礎 ―文化財とは何か―

【新訂増補】戦災等による焼失文化財 2017

 

【レビュー】世界遺産を問い直す②

前紹介した書籍で、①→③の順番で書いちゃったので補完の②を載せます。

 

rissho-blog.hatenablog.com

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屋久

屋久島の歴史

 

・IUCNが勧告した改善点(1992年, 1997年)

→日本の隠蔽(境界線の変更)→拡張すべき

 

・人間との関わり(地元の人々の対策と頑張り)

IUCNの自然の評価ばかりが目立つが、人との関わりも重要。

例:①伝統行事の再興

  ②里巡りツアー

  ③検定などの屋久島学

 

知床

知床が推薦されるまでの経緯
  1. 登録のためには、他の諸外国の遺産と差別化しなければならない。
  2. 流水によってもたらされる生物の多様性を"知床"の価値として推薦。
  3. 自然美は欧米などのものさしでは異なる場合がある。

 

世界自然遺産に登録されるも、IUCNや世界遺産委員会から様々なリクエストが届く。知床の保護している自治体は、適宜これらの要求をパスしている。

 

→これらのやり取り・やり方を知床方式と呼ぶ。

 

キーワード:エコツーリズム

 

知床と人

・大正昭和では、知床地域から人々が離農し、厳しい生活環境であったが、1960年代を契機に注目され国立公園に指定される。

その後、多くの人の努力を経て、開発も防いだこともあり、晴れて世界遺産に。

 

・2014年には羅臼町で知床と人が紡いだ文化を再確認する目的で、昆布漁のエコツアーを開催。

 

世界遺産平和公園として、知床と北方領土を登録することによって、領土問題と生態系(北方領土)を保護・解決できるのではないか...?

 

小笠原諸島

小笠原諸島の価値

・海から大陸が生まれてくる過程を示す(ⅹ)

 

・適応放散による多くの絶滅危惧種の固有種が存在(その数が少ないということで世界遺産の評価ⅹに登録されている。現在進行形で研究が続いている)

 

外来種問題

終戦後、アメリカに占拠され、返還されるまでに外来種が侵入。一時は危機に陥る。

例:グリーン・アノール

 

・ノネコ対策は他の地域のモデルとなるような取り組みを見せる。

 

小笠原諸島と日本人の歴史は、江戸時代からと短いが、今から140年前でも多くの種が絶滅している。

 

外来種やインフラ問題など、深刻な姿勢で取り組むことが重要。

 

奄美大島・徳之島・沖縄島北部及び西表島

評価価値

生物多様性

ユニークな亜熱帯雨林と生態系の連続性。

 

奄美大島・徳之島・沖縄島北部及び西表島琉球地域に属していたこともあり、日本と中国、台湾の文化が混ざりあっている。

 

登録されるまでの経緯

・2017年にIUCNから登録延期の通達。

→遺産そのものの課題と誤解によるもの

 

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・島独自の踊りも行われており、自然との関わりが深い。

・シマ遺産を再認識。

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これで、「世界遺産を問い直す」のレビューは正式に終了します。

世界遺産を問い直す (ヤマケイ新書)

次回はこの本を紹介する予定です。

世界文化遺産の思想

【レビュー】世界遺産―理想と現実のはざまで(著中村俊介)②

前回の記事はこちら

rissho-blog.hatenablog.com

 

対馬から韓国国内へ盗まれた仏像

・この事件を取り扱った韓国地裁の判決が話題に。

→韓国地裁の裁判官は、盗まれた文化財は中世のときに、倭寇(大雑把にいうと日本側)に盗まれたものだから返還する必要はないとの判決を下したのだ!

 

しかし...

元々「倭寇」が盗んだ代物なのか。そもそも盗まれた時期は正しいのか。

様々な時代考証が必要な事象なだけに、現代の司法で、過去の不確定な歴史を見抜けることはできない。

 

こういった時代錯誤の問題が絡む文化財の帰属はどうなるのだろうか...

 

・博物館や美術館等でも上記の問題性を孕んでいる。

文化財を故郷に返す意見は最もである。...が、所蔵していた遺物を博物館や美術館が失うことによって影響するデメリットも鑑みねばならない。

 

無形文化遺産

無形文化遺産世界遺産の最大の違いは"Outstanding Universal Value"(日本語訳は顕著な普遍的価値)の有無である。

 

世界遺産と同様に、無形文化遺産にも諸々の問題も発生しつつある。

→例えば、登録件数の拡大(対策として登録上限を設けている)と、無形文化遺産の審査による業務量の拡大である。

 

・地域の変容によって、無形文化遺産が無くなる可能性がある!?

(例:トシドン、ボゼ、パーントゥ

例に挙げたものは、どれも日本の信仰行事です。興味のある方は調べてみて下さい。

 

なぜ無くなりそうなのか...原因としては様々である。

①担い手の減少

②地域の過疎化

少子化

④ライフスタイルや価値観の変化

 

潜伏キリシタン関連遺跡は、長い道のりを経て、世界遺産に登録された。

 

世界遺産登録のため、(諮問機関や世界遺産委員会に伝わりやすい)分かりやすいストーリーを作るために、「かくれ」キリシタンに関する遺産を除外して推薦。

→「かくれ」キリシタンに関する歴史(項目)は重要なだけに、世界遺産登録のために切り捨てるようでは、世界遺産制度はデメリットでしかない。

 

・400年続いてきた潜伏キリシタンたちの風習も時代の流れとともに、綻びが見え始めている。(例:生月島

 

世界の記憶

・世界の記憶は、ユネスコの一事業で、国際条約ではないため、その権威は世界遺産無形文化遺産に比べて低い。

 

山本作兵衛の炭鉱史料が、初めて日本で最初の世界の記憶に登録されたことによって、国内でもその知名度の広がりを見せた。

 

・この"世界の記憶"事業も国単位による政治的恣意が絡んでしまう。

例えば、日本の地方自治体が推薦した日本の特攻隊史料(特攻隊兵士の遺物)は中韓から「戦争の美化」だと非難された。一方、中国が推薦して一度は登録された、南京大虐殺に関しては、日本側が猛反発する事態に。

 

・一方、地方単位の推薦では良い結果を生んでいる事例もある。

→日本のNPOと韓国の文化財団が協力し、様々な国情や歴史認識を乗り越えて、朝鮮通信使史料が世界の記憶に登録された。このような取り組みこそが、模範的な姿ではないかと筆者。

 

水中文化遺産保護条約

・韓国や中国では、水中遺産の調査機関が成果を出している。日本はその調査機関に該当する組織がない。さらに、水中遺産については知名度も低い。

しかし、鷹島沈没船の発見によって海底遺跡に対する話題を呼ぶ。

 

終章

世界遺産条約批准に日本が遅れた一説として、文化財保護法など、既に優れたシステムが確立されていたことが有力。世界遺産条約批准後は、日本の保護体制が世界遺産に段々引きずられるようになったと筆者。

 

・文化的景観は日本と世界でそのニュアンスが異なる。

 

面で保護するようなった現在の世界遺産の風潮では、文化庁のみで対応することは難しくなってきた。実際、明治産業革命遺産は、稼働中の遺産もあったことから、内閣官房が登録を主導していた。

 

世界遺産の中継地点である「日本遺産」の誕生。

・保護は保存に活用の要素が加わったもの。

 

・日本が世界に新しい文化財システムの見本を提示すべきではないだろうか!

 

感想

2回にわたり本書を紹介してきましたが、様々なトピックスから文化財保護の問題点を紹介してくれる本でした。

ユネスコの事業は、世界遺産が最大の成功とも言えますが、実際問題今は色々な問題が起きていますよね。それは、無形文化遺産や世界の記憶でもそうで、何かしら問題が発生してしまうのは、辛いですね。

日本もその問題を引き起こしてしまっていた当事者なわけですが、これからは文化財保護のグローバルスタンダードとして、世界を引っ張って行ってほしいですね!

世界遺産の「事前評価」導入へー導入の背景は?影響はいかに?

こんにちは。ゆうです。

実は先日、このような記事を見つけました。

 

www.jiji.com

どうやら、この前の世界遺産委員会で、各国が世界遺産登録の推薦書を提出する前に「事前評価」なるものを取り入れるそうです。

 

これについて、詳しく見ていきましょう。

「事前評価」の背景

記事を見てみると、どうやら諮問機関と世界遺産委員会の間に生じていた評価の食い違い、つまり逆転登録を防ぐためらしいです。

 

これに関しては、当ブログをご覧になっている方はお分かりだと思いますが、前々から逆転登録については、ユネスコの喫緊の課題になっていました。

 

どうやら、この前の世界遺産委員会でついに本腰を上げたようですね。

 

ポイントは、

  1. 評価を行うのは諮問機関であるということ
  2. 事前評価の諸費用は自国が払う

この2点かと思います。

 

驚くべきは、その1件あたりの審査の値段。なんと230万らしいです。(構成資産により変動)

これを高いか安いかどうかは、人それぞれだと思いますが、学生である自分から見てこれは高いと感じました(笑)

 

世界遺産基金が不足していることからも分かる通り、この財源負担は致し方ないと思っています。

 

財政力の弱い国には配慮がされるとのことですが、この「配慮」がどこまで許されるかが問題ですよね。

 

流石にその財政力の弱い国を一々サポートするわけにもいかないですし、そんなことをしたら諮問機関側もさらに疲弊してしまう...贔屓するわけにもいかないですし、ここは本当に微妙な線引きではあります。

 

そして、諮問機関側が事前評価をするということについて。つまりは、

 

諮問機関の評価→諮問機関の評価→世界遺産委員会の評価

 

というプロセスになるわけですが、果たしてこれで本当に逆転登録の事態を防げるかどうか。記事にもあったように、評価側との対話を増やすことは確かに有効です。

 

しかし、これが直接的に課題の解決につながるかどうかは分かりません。

 

今回の決定が果たして正しかったか否かは5年か10年後かの未来でないと、評価はできないでしょう。

 

ただ、ひとつだけ言えることは、こうして世界遺産委員会で課題の解決に乗り上げようと努力し始めたことは大きな意義があると思います。

 

他にも世界遺産が抱える問題は数えきれないです。

 

こうして来年も、積極的に諸問題について、任期がある21の国が話し合っていただきたいと思います。

 

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